読んでいる本に「茶碗蒸し」が好きな人物が出てきた。あの具と出汁の入ったプ
リンのような食べ物ですが、よく考えると名前がおかしい。名前の通りだと食べ
られるものではない。「茶碗」は蒸して食べられない。
だからといって「茶碗焼き」も「茶碗煮」食べられない。そんなものは存在しな
いから、問題はないのだけれど。
「茶碗蒸し」は食べられない食べ物として矛盾を抱えている。世界がこの矛盾に
気がついて、律儀に中身のことをちゃんと言おうとしたとすると、
卵をボールに入れてほぐし、だしを加えて、混ぜ合わせ、しょうゆ、塩みりんを加え、このとき、塩を一気に入れず、塩の入れ加減で味の濃さを調整して、混ぜ合わせ、漉して不要なものを取り除…(中略)…蒸したものと、「名前=レシピになってしまうかもしれない。これは、よろしくないと思う。
注文にも時間がかかってしまってしょうがない。
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ファミレスなどでは、
僕「卵をボールに入れてほぐし…(中略)…蒸したものをください」
店員「では、ご注文を繰り返させていただきます。卵をボールに入れてほぐし…(中略)…蒸したものでよろしかったでしょうか」
ファミレスバイトの募集欄には早速「早口得意な人歓迎」等の記載が出てくるだ
ろう。さらに配膳した時、店員「お待たせしました。卵をボールに入れてほぐ
し…(中略)…蒸したものでございます」言い終わるころに冷めているかもしれ
ない。
それに加え、店が手書きの伝票の店だと色々詰む。無駄な時間が大量に生まれ、
客の回転率が悪くなることこの上ない。それでお金の回りも悪くなると思われる
ので、経済はもちろん成長しない。
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なるほど。もし「茶碗蒸し」が「卵をボールに入れてほぐし…(中略)…蒸したも
の」となっていたら、経済発展が遅れ技術革新も進まない。スマホは、まだこの
世に生まれておらず、日本など、まだ鎖国しているかもしれない。
そういう不都合がたくさんあるので、人類は「茶碗蒸し」という名前の抱える矛
盾に目をつぶり続けているともいえそうだ。人類は、真理より実益を選んだので
ある。
美味しい茶碗蒸しを食べたくなった。
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